暮らしの小説大賞‼;︎『しねるくすり』平沼正樹

暮らしの小説大賞‼;︎『しねるくすり』平沼正樹

「生活の、もっと身近に小説を」というコンセプトで2013年に設立された文学賞が『暮らしの小説大賞』

第6回 暮らしの小説大賞として、『しねるくすり』が受賞しました!

corgiの評価

面白さ★★★★⭐︎

意外性★★★⭐︎⭐︎

のめり込み度★★★⭐︎⭐︎

人に勧める度★★★★★

総合評価★★★★⭐︎

書評:強いメッセージ性のある、万人にオススメできる小説!!

あらすじ

 10年の浪人期間を経て薬科大に入学した数納薫と、12年もの浪人生活をまるで青春を謳歌するかのように過ごした芹澤ノエル。田舎の内科開業医の息子と大病院理事の孫とではそのライフスタイルや考え方はまるで違っていたが、二人はお互いに心許せる関係を築いていた。しかしそんな日々は、ある日突然、終わることに。芹澤が自殺したのだ。

 芹澤の死が受け入れられない薫は、ある時、彼が残した薬の存在を知った。それは、たった一錠で痛みも苦しみもなく確実に死ぬことができるという薬だった。時を同じくしてSNSでは不可解な死の連鎖の噂が広まり始まり…

しねるくすりの帯より

オススメポイント

本書のテーマは死。しかも、自殺について。

鬱といった精神的病気が注目される現代で、多くの方が注目している分野だと思います。

人は誰しも死にたいと思ったことがあるのではないでしょうか?

人はなぜ生きるのか。目的は一体何なのかを追求し、著者の答えを本書を通じて知ることができます。

「くすり」という言葉を巧みに使いこなし、わたしたち、特に精神的に落ち込んだ気分の方に対して強いメッセージを送っています。

生きるのが疲れてしまった。日々の生活に嫌気が差している。もしそんな気分であるならば、一読の価値はあるのではないでしょうか?

この本を読んだら明日への活力が湧き上がってくる!ということは多分ないでしょう。しかし、少しでも前を向いて明日を迎えられる様にという筆者の強いメッセージを受け取り、何かが変わることもあるのではないでしょうか?

ぜひ読んでみてください。

ネタバレ&corgiの感想

くすりの副作用として、明日への活力を見いだす。

ものすごく過激であるが、その通りだとも思いました。もし自分がいつでも死ぬことができるのであれば、明日をより輝かしく生きれるのかな?

わたしはそこまで強く死にたいと思った経験はありませんが、生きるとは何なのだろうかと悩むこともあります。

筆者は、愛する人を持つことが生きる目的であるという考え。

しかし、身を焦がす様な完成された愛情を抱ける人は本当にごく一部のみだとわたしは考えます。

そんな人と出会えることは本当に素晴らしく、羨ましい限りです。

しかし、わたしとしては、くすりで自分の存在を認識するという方が現実味を帯びており、共感できるなと感じました。

本書では、くすりを持つことによる明日への活力と、愛する人を想うことによる明日への活力を対等に並べています。

最後に薫が水をこぼし、死にたい由乃を殺さなかった。薫のエゴで由乃を助けたというモヤモヤしたまま終わったのは、筆者としても意見を押し付けるのではなく、この様な考え方もあるんだよという提示であったためなのかなと考えています。

セリーヌが由乃であるというのが少し早めの段階でわかってしまったこと,由乃と関係をもった夜の意味について府に落ちない部分もありますが、他人にオススメしたい良書であり、満足しています。